【d!】この神社の神様たち。 (ページ1)

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第一章　逢魔が時ページ1

結婚を約束していた彼氏の浮気が発覚した。

同棲もしていて、家賃も折半だったが名義が彼の名前である以上、出ていくのは私となってしまい荷物を片手にトボトボと行く当てもなく歩いていた。

「ほんと最悪…」

郊外にある小さな神社の前にある階段に腰を下ろす。

黄昏時の空は茜色から紺色へ美しいグラデーションがかかっていた。

それは不気味なほど美しい空。

ひとしきり泣いた後、スイッチが切れたかのように涙が枯れてしまった。

なぜ泣いていたのか、自分でもよくわからなくなってしまった。

ただ、結婚を約束していたこの４年間は無駄だったんだなと怒りは湧いている。

まぁ、もう心底どうでもいいわけだが。

自分のこの諦めの早い性格は割と嫌いじゃなかった。

「…手でも合わせてとりあえずネカフェで一晩過ごそうかな」

そのあとは仕事も変えて地元にでも帰ろうか。
そんなことを考えながら階段を登り、鳥居を前に一礼した。

神様が通る真ん中の道を開け鳥居を見上げると『我々神社』と彫られた石が固定されている。

「こんなところに神社があるとは…」

長く住んでいたが目にも止まらなかった。

調べて納得、ここは縁結びの神社で彼氏のいた自分にはそれこそ「縁のない場所」だったわけだ。

「それにしてもかなり年季の入った…」

小さな神社は鬱蒼とした林の中を切り開くようにポツリと佇んでいた。

地元の人ですら来るかどうか疑わしいほど、手水舎(ちょうずや)には木から落ちた葉が水面に浮かんでおり、水も濁っていた。

「ここの神様も災難だね」

賽銭箱の前に向かうと、そこにもたくさんの葉が落ちていた。

小銭を投げたら葉に引っかかってしまいそうで、賽銭箱の上の葉を綺麗に払った。

「うん、これでよし」

充分ご縁がありますようにとありきたりだが１５円を放り込む。

手を合わせてゆっくり目を閉じた。