【d!】この神社の神様たち。 (ページ2)

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「人生を変える出会いがありますように」

縁結びの神様ならこの４年間を無駄にした私に運命の出会いをちょうだい。

運命なんてそれがどんなものかは分からないが、そう強く願い目を開けると賽銭箱を挟んだ社に装束のような衣服を着たひとりの男が立っていた。

あまりにも突然の出来事に肩をびくりと上げ思わず一歩後ろに下がる。

「だ、誰…？」

「久々の参拝者やなぁ」

口角をあげ目を細める男の瞳は深海を連想させる色をしていた。

長い前髪で片方の目が隠れており銀縁の眼鏡をしている。

「神主様ですか…？」

「いんや？一応神様やけど？」

目の前にいる男はフゥと煙を吐く。

何を言ってるんだと視線を向ければ「信じてへんね？」と首を傾げながらさらに笑う。

「４年付き合ってた彼氏に振られて運命の人〜とか、そんな感じの出会いをお願いに来たんちゃうの？」

ズバリと言い当てた男に「なんで」と目を見開く。

警戒心から胸の前に手を持っていき、キツく拳を握りしめた。

「これぐらい分かる。あと…」

男は賽銭箱を指でなぞりながらゆっくり近づいてくる。

「これ、綺麗にしてくれてありがとうね。最近は全然人も来ぉへんから」

人当たりのいい笑顔を浮かべた男は右の手の平を差し出すとポンっと何もない場所から小さな巾着袋を出した。

驚きのあまり目を擦り、幻覚じゃないことを再確認する。

「これはそのささやかなお礼や。幸せを呼ぶ御守り」

怪しいものじゃないからと言われ、ゆっくり手を伸ばしてそれを受け取った。

巾着袋はその小さな見た目よりも少しだけ重く、中からは固いものが当たる音がする。