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「おい、来るぞ。集中しろ」
トントンの声に全員が鳥居の方を向く。
時刻はもうすぐ午後５時。
黄昏時…いや、この神社にいるのであれば逢魔時と呼ぶのが正しいのだろう。
時計なんて持っていないはずなのに、頭の中でカチカチと秒針を刻む音がする。
「Aちゃん、俺さっき言うたよな」
大先生が背を向けたままAの目の前に立つ。
辺りは生暖かい風が吹き良く無い雰囲気は肌で感じ取れる。
「人の願いから生まれた神様っちゅうのは、時代が変われば変化するって。俺らんところはな、今調べりゃ縁結び神社って出るかもしれへんが、元々の願いは『災いを封印したい』と願った人々が建てた社なんや」
午後５時ちょうど。
外で遊ぶ子供たちが家に帰るように鳴るサイレンの音がどんどんと歪み始める。
『時刻ハ……ゴゴ５ジデェス…ゴゴゴゴ５ジジィジ…』
「なに…？なんなの…？」
「……来る！」
突然、鳥居の向こう側から突風が吹く。
風の吹いた方を向くと鳥居の内側から無数の腕が伸びてきているのが見えた。
鳥居をガッチリと掴みこの神社に侵入しようとしているように見える。
『５ジジデデス……オウチニ……カカカエリエリマショ…』
無数の腕、顔の大半を占めている大きな口、スピーカーのような形になった耳。
その異形を目の当たりにしてAはヒッと小さな悲鳴を溢す。
「ここんところ、こいつにえらい苦戦しとってなぁ。今日こそ決着つけさせてもらうで」
横にいたチーノはAを賽銭箱の前まで下がらせる。
ショッピも後方まで下がるとふたりはAを守るように結界を張る。
「Aさんはここで見てればええですよ」
「とにかく俺らに力を与えるイメージを身体に叩き込んでください。歯ァ食いしばってくださいね」
瞬間、ブレスレットの一部が輝き始める。
『５ジジデデデデス……カイヌシシサマママママココロスススススコロコロスス』
異形の魔物はその大きな図体から想像できないスピードでAの方にまっすぐ突っ込んできた。
結界を張っていた為難を逃れたが、バケモノを間近にして腰が抜けてしまう。
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作者名：味鈴
| 作成日時：2023年5月24日 16時
