【d!】この神社の神様たち。 (ページ3)

今日:165 hit、昨日:420 hit、合計:196,834 hit

・ページ3

「なんですかこれ…」

「開けてみてもええよ？」

変な物でも怖いと巾着の紐を解き中身を見る。

中には色とりどりのガラス玉が入っていた。

キラキラ光っていてとても綺麗だ。

「怖いことがあった時、悲しいことがあった時、それが君を守ってくれるで」

にわかには信じ難いが何故か嘘をついているようにも見えなかった。

どこかで会ったことがあるような、そんな懐かしささえ感じるようになっている。

ギュッと巾着袋を握りしめ男の目を見る。

「あの…名前は…？」

「…あんま神様っぽい名前ちゃうんやけど…鬱。大先生とかも呼ばれるけど、まぁ好きに呼んでや、Aちゃん」

まだ教えていないはずの名前を呼ばれ、本当に神様なのではと非現実的なことを考えてしまう。

「暗なってきたな。いくら縁結びとはいえ、ほんまはこんな時間に神社なん入ってきちゃダメやで。ほら、振り返らずさっさと帰りや」

茜色のグラデーションがかかっていたはずの空はすっかり紺色が強まり、神社は薄暗くなっていた。

返事に戸惑っていると「さぁ、早う」と鳥居に向かって背中を押される。

「振り向かず、真っ直ぐや。また明るい時においで」

大先生にそう言われ、少し迷いながらも振り向くことなく鳥居をくぐり、階段を降りた。

今夜はとりあえず当初の予定通りネカフェに泊まって、明日また来てみよう。

ガラス玉の入った巾着袋を握りしめ、夜も光り輝く明るい街の方へ歩を進めた。