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時刻は午前１０時。
神社の手水舎を綺麗にするため、巫女姿にバケツとタワシを手に持ち現れたA。
しっかりとタスキをかけるとまずは覆われた葉をゴミ袋に捨てていく。
「水が汚いのって一番よくないよね」
この神社の水は少し離れた山から直接引いているらしく、水自体は澄んでいてとても綺麗だという。
長らく使われていないせいか、その水が出る管が詰まっており、割り箸ほどの細い棒を管に突っ込みグリグリと回している。
ボコっと音が鳴ると詰まっていた草や泥が勢いよく出てきた。
同時にチョロチョロとしか出ていなかった水も出始め、初めは濁っていたがすぐに透き通った透明に変わる。
「よかった。管が死んでたらどうしようかと思った」
水が出始めればもうこちらのもの。
一度水を全て抜いた石造りの手水舎をゴシゴシとタワシで磨く。
綺麗にした後は神社に生えていた花を手折り静かに浮かべた。
手水舎の屋根の葉も竹箒で落とす。
見違えるほど綺麗になったのを見て、自己満足に浸りながら冷たい水で手を洗った。
「うん。いい感じ」
「めちゃくちゃ綺麗になってますね」
突然の声に振り向くと、装束の袖の中に手を入れ腕を組んでいるショッピがいた。
人当たりのいい微笑みを浮かべながら手水舎の屋根の下に入る。
「初めて会った時もここでしたね。お気に入りの場所ですか？」
「敬語じゃなくてええですよ。まぁ…そうっすね。本殿はあの人らが割とうるさいし、ここは静かで好きです」
柄杓(ひしゃく)を手に取り綺麗になった水を掬い上げる。
山から直接引いた水はとても冷たく、多少ではあるが残暑を和らげてくれる。
ショッピは感心するようにAを見た。
「言ってくれたら手伝ったのに」
「初めて見たときから汚れてるなって思ってたから。どうせここの管理も契約に含まれてるし、なら早めにやっちゃいたいなって思って」
言われた通り敬語を崩しフランクに話すA。
ショッピも「真面目ですねぇ」と言いながらも綺麗になった水回りに満足そうにしていた。
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作者名：味鈴
| 作成日時：2023年5月24日 16時
