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「暑いね」
「…唐突っすね。まぁ…確かにそろそろ終わるとええんやけど」
額の汗を拭い、Aはタスキを解く。
小上がりになっている手水舎に腰を下ろすと、鳥居の方を見つめる。
「本当に人来ないんだね」
「近所の婆さんや爺さんがほんま気まぐれに来るぐらいっすよ」
同じように隣に腰を下ろすショッピ。
日に当たりたくないのか、足を自分の方に小さく丸め、膝を抱えている。
「……受け止め早いっすね」
「似たようなことを今朝トントンさんにも言われたよ。まぁなるようにしかならないし、住むところ新しく探さなくていいってプラスに考えるようにしてる」
まぁ、魔物は当然怖いけどね。
苦笑いを浮かべながらもAは既に生活に順応しようとしていた。
これだけの力を持っていると、人間性も変わっているのだろうかと思いながらショッピは地面に置かれたAの手を握る。
「な、なに？」
「指、痛くないですか？」
持ち上げた手の人差し指には変わらず絆創膏が貼られている。
そういえば、かなり血が滲んでいて貼り変えなきゃと思っていた。
一度も変えていない割についている血の量が少ない気がして無意識に変えていたかなと首を傾げる。
「どうかしました？」
「あ、ううん。絆創膏いつ変えたっけなーって思ってたところ。チクチクするけど全然大丈夫だよ」
Aの言葉にショッピは得心のいかないような表情を浮かべる。
巻かれた絆創膏をジッと見つめながら何か集中しているようだった。
「…ゾムさんか」
「ゾムさんが…どうかした？」
明らかに眉を寄せたショッピは「なんでもないですよ」と言いながら表情を作り直し、絆創膏の上に口付けを落とす。
あまりにも自然な振る舞いにAは顔を赤らめた。
「早く良くなるようにまじない掛けておきました」
「あ、ありがとう…」
「いえ、何かあれば呼んでください」
絡めた手を離すと、ショッピは立ち上がり本殿の方へ姿を消した。残されたAは指先の絆創膏を見つめ再度顔を赤らめる。
「ここの人達は全く…距離の取り方おかしいよ…」
そこまで言ってハッと冷静になる。
ああ、人間じゃなかったな……
自分の常識で計ったところで無駄だなとAは大きく伸びをし立ち上がる。
ついでに参道も掃除しようと竹箒を握り直すと、照り付ける太陽の下に再び足を踏み入れた。
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作者名：味鈴
| 作成日時：2023年5月24日 16時
