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いつもより大幅でショッピは廊下を歩く。
ドスドスと荒っぽい足音は遠くで聞いていても何かしら怒っているなということが容易に想像できた。
「ゾムさん」
部屋の襖をガラッと開ける。
部屋の中にいたゾムは刀の手入れをしており、拭紙(ぬぐいがみ)を口に咥え打粉をしていた。
「Aさんの絆創膏、剥がしたのゾムさんっすよね？」
ゾムはピクリと片眉を上げる。
咥えていた拭紙を離すと優しく刀を拭い、刃を見るように真っ直ぐ目線上に刀を構えた。
「だったらなんや」
「『何のために』新しく変えたんすか？」
ショッピの言葉に嫌悪の形相を浮かべる。
刀を鞘に納めると目に角を立てながら睨みつけた。
「俺が噛んで怪我させたから…トントンに言われて昨日様子を見に行った時に変えた。血が…かなり滲んでたから」
「飲んでないですよね？」
瞬間、ゾムはショッピに飛びかかった。
喉元に腕を滑り込ませ、そのまま強く壁に押し付ける。
「飲んでへん！！」
「……っ痛いっすよ」
喉元を押さえつけられたショッピは顔を歪めながらゾムを真っ直ぐ見つめる。
苦しそうな表情を見て我に帰ったのかゾムはゆっくり腕を離した。
「……すまん。コネシマに止められてなかったら…」
「……いえ」
ゆっくり畳に座り直すゾムは俯いたまま唇を強く噛んでいた。
ショッピも向かい合うように座ると袖を伸ばし姿勢を整える。
「ゾムさんが一番しんどいのは分かってます。すいません。気が立ってました」
「いや、ええんや…抑制しなあかんことぐらい分かっとる」
最近目の下のクマが酷いと、ショッピは俯くゾムを見ながら思い耽る。
彼の事情は当然察しているが、かなり切迫していたのだと認識を改めた。
「発作は？」
「…２日いっぺんぐらい。特に逢魔時はなるべく抑えることに集中してる」
「そうすか…トントンさんには話してますか？」
「…発作の頻度が短くなってることは伝えとらん。これ以上あいつに負担も掛けられん…」
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作者名：味鈴
| 作成日時：2023年5月24日 16時
