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『災難だな、お前も』
夢だと理解するのに数秒かかった。
夢だと分かった理由を挙げるのであれば、見たことの無い場所にいたからだ。
自分は今我々神社にいるはずで、こんな場所に見覚えはない。
あれ?そもそも私、いつ眠り始めたんだっけ?
「誰ですか?」
目の前にいる男と自分の間には御簾(みす)がかかっており、何となくそこにいるというシルエットしか確認できない。
『グルッペン。俺もまた、土地神のひとりや』
御簾から姿を現した男は、蜂蜜色の美しい金髪から茜色の瞳がキラキラと覗かせる神々しい男だった。
ただ何故か、どことなく懐かしいような雰囲気を思わせる。
「ここ最近、神様に縁が多いのかな」
『せや。やからお前に、困難を乗り越えられるよう力を分けに来た』
グルッペンは目の前までやってきて目線を合わせる。
額と額を合わせるように前髪をかき上げ瞳を閉じた。
『お前の力を上手く引き出せるようにするまじないやと思えばええ』
額を離すと、グルッペンは小さく微笑む。
『どうか、その力であいつらを助けてやってくれ』
「あいつらって…」
グルッペンは私の目元に手を置く。
暖かいその手に、瞼が自然と落ちていく。
『そろそろ起きる時間や。また会おう、A。今度は眠りすぎないように』
低く、落ち着きのある声に包まれながら、私の意識は再び遠くなっていった
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作者名:味鈴 | 作成日時:2023年5月24日 16時