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「誓いますよAさん」
ショッピが右手をかざすと斧のような形をした武器が現れる。
強く握りAの前に立ち塞がるかのように斧を振る。
「誰も死なせません。それが貴女の願いなら！」
結界を小さくしAの周りにだけ張り直す。
昂る感情そのままに力強く地面を蹴ると、伸びてくる触手を避けながら本体へ突っ込む。
「ショッピ！」
ロボロは弱点に気が付いたのか、特大の力を込める為、弓を引いたまま膝を地面につき構えている。
ショッピはニッと口角を上げると触手を切りながら前へ進み、開いた腹をさらに大きく裂くよう斧を振るった。
『ギャアァアッ！』
「ロボロさん！」
「ナイスやショッピ！」
矢は凄まじい勢いで裂いた腹の中に直撃し、魔物は耳をつんざくような悲鳴を上げるとドサリと地面に倒れた。
援護していた他の皆も大きく息を吐き安堵する。
「ふぅー……」
今日見たグルッペンという男に分けてもらった力は夢ではなく現実のようだ。
A自身も力の流れを把握できるほど様子が変わっていた。
ロボロの言ってた『感覚』とやらはこれのことだったのかとようやく理解ができた。
「Aさん」
結界が解かれると、ショッピは座り込むAに手を差し伸べる。
「…ありがとう」
グッと引っ張られ立ち上がるとショッピはそのまま抱きしめる。
あまりにも突然のことに周りの皆も「はぁ！？」と声を上げ、Aも目を丸くして驚いていた。
「ど、どうしたの…！」
「俺、Aさんの為なら命掛けられます」
スリッとAの首筋に頬を寄せると、少し離れて微笑む。
顔を赤くするAを揶揄うように指先にキスをすると大先生が「ショッピィ！！」と脇腹をど突いた。
『力の流れが把握できたようだな……頼んだぞ』
頭の中に声が聞こえてきた気がして空を見る。
一番星が夜空に煌めき、頬を撫でる風は少しだけ秋の香りがした気がする。
夢の中に出てきた彼、グルッペンは確かに言った。
『どうか、あいつらを助けてくれ』
まだまだ彼らのことを何も知らないA。
彼らのことだけじゃなく、自分のこの力のことも何も分かっていない。
「知らないことが多すぎる…」
まずは知ることだ。
何もかもを。
Aは決意を胸にブレスレットを強く握りしめる。
少し離れた場所で一部始終を見つめる浅緑の瞳の男の顔には、深い影が落ちていた。
第三章 覚醒
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作者名：味鈴
| 作成日時：2023年5月24日 16時
